作:菜の花すみれ・前田きん
パティだよ!
みんなは体を動かすのって好き? それとも苦手?
もちろん私は大好き!
走ったり、ジャンプしたり、泳いだり、演武したり。
すごく熱中すると、指の先から足の先端まで、どう動いてるのか全部わかって。
体がぴたっと思い通りに動くと、本当に気持ちいいんだ。
もう考えただけでドキドキしちゃうくらい……。
え? いつにも増してテンション高い? あはは、そうかも。
だって今日は、ちょっと特別な日だから。
なんと! 私は今日、先生をするんだ!
責任重大! 先生がダメじゃ、なんにもならないもんね。
私、がんばるよ!
もちろん、教えることは私の一番得意なことで……。

「月歌! レン! 並び方は横一列にね!」
「はーい、パティ先生」
「……………………」
私たちが集まったのは、森の中にあるちょっとした広場。
近くに滝とか水場もあって、キャンプするのにもいい場所なの。
私たちだけで使うには広すぎるぐらいだけど、大は小を兼ねるというし。
それに広い方が断然開放感があるしね。
「琥珀たちも、腕がぶつからないように間隔とってね。腕も足もいっぱいに伸ばすから!」
「パティったら、やる気満々ですわ」
「興奮するみゃ、楽しみだみゃ!」
「前から興味はあったのだが、体験できるのはますますいいな。実に面白い……」
琥珀とねこめ、そしてオニキスたちは、宙に浮きながら両手を左右に広げて間隔を取っている。
天気は快晴で、これでもかってぐらいピクニック日和だけど、今日に限ってそれは後回し。
私たちがここに集まった理由、それはちょっとした授業を行うこと。
「みんな準備はいい?」
「ええ、パティちゃん。始めてください」
「うん、じゃ、第一回パティの格闘技教室、開講だよ!!」
パチパチパチと拍手が起こる。
そうなんだ。今日、私がみんなに教えるのは格闘技。
私の得意分野に、みんなが興味を持ってくれるのは嬉しいよね。
腕が鳴るよ!

ボキボキ、バキバキバキ。

「パティちゃん、その音は?」
「え? あ、こ……これは準備運動だよ、準備運動! 手をほぐすために……」
「うーん、パティみたいに鳴らないみゃ!」
ねこめが手を一生懸命にぎにぎしてる。なんだかすごくかわいいなあ。
「すごい音を出せるパティはやっぱりすごいんだみゃ!」
そこで感心してもらっても……。手が鳴るのはおまけみたいなものだから。
「パティ、他の準備運動から始めたらどうですの?」
「そ……そうだね、琥珀」
いけないいけない、今日は格闘技を教えるんだから。
脱線しない、脱線しない!
「それじゃ、まずは屈伸運動ね!」
体が硬くなっているとケガするからね。肩を回して、腕を伸ばして、首を……。

ゴキッ

「いまパティ、すごい音したみゃ! やっぱり格闘のすごい人は違うんだみゃ!!」
あーん、そこ驚くところじゃないのに〜!

「今日やるのは打撃! 簡単に言うとパンチから!」
格闘技といってもいろいろある。
大きく分ければ手足を叩きつける打撃系と、相手をつかんで倒す組技系の二つがあって、他にも流派によって二つを組み合わせたりしてる。
私はどちらかというと打撃系が得意なんだよね。
まずは私がお手本を。
「これが左のジャブ」
両手を胸の前に構えたファイティングポーズから。
まっすぐ、そして素早く!
私は左腕をムチのようにしならせた。

ビュ!!

「風を感じましたわ……」
「……………………!」
一瞬の動きを、目で捕らえきれなかったのか、レンがパチパチと瞬きを繰り返す。
「腕が……伸びたように見えましたわ」
「蛇みたいに動いたみゃ! カエルの舌みたいにも見えたみゃあ」
「しなやかで、なかなか美しい。目に心地良い体術だな……」

えへへ。
なんだか褒められてばかりで照れちゃうなあ。

「ふむ、地球で言うところの"ボクシング"に似ているな」
「ん? そうなんだ? これは私が格闘技を習い始めたときに、お父さんが教えてくれたやり方だよ?」
思い出してみると、お父さんにもずいぶん練習つきあってもらったなあ。
「お父さんが言うには、打撃の初心者にはこの方法が教えやすいし、効率いいんだって」
「ゼムさんは剣技以外の格闘技にも精通してらしゃるのですね……」
お父さんマジメだから、なんでもちゃんと教えてくれるけど、突然格闘技をやりたいと言い出した私のこと、どう思ってたんだろ。
本当は困ってたかなあ……。
「とにかく練習練習。ヘンなところがあれば、私が見てチェックするから」
私に言われて、みんなが見よう見まねのパンチを出し始める。
そうそう、私もみんなと同じで、最初は力いっぱい腕をぶんぶん振ってる感じだったね!
でも、だんだんわかってくるものだし。
思い通りのパンチになっていくのが楽しいの!
さて! ジャブがだいたいわかったら、次はストレートを教えて、それからフックにアッパーに……。

バサッ バサッ

なに?
ビュでもブンでもない、バサッて……。誰かウチワを扇いでる?

「月歌?」
見れば月歌が、腕を振るたびに袖をふわふわさせていた。
「……袖があると、ジャブは難しいみたいですの」
「うーん、巫女服は袖が長いもんね」
巫女服で袖は……まくれないよね。どうしよ?
「月歌、これを使ってみてはどうですか?」
細長い帯のようなものを、琥珀が持ってくる。えーと、それは……。
「琥珀……、それはたすきですか?」
「そうですわ♪」
「あ、なーるほど」
これなら長い袖もキレイにまとまるよ。
月歌はヒョイヒョイっと慣れた様子で、たすきがけをしてみせた。
「これでどんなに動いても、もう袖は邪魔になりませんわ」
人の知恵ってすごいよね。帯一本でフォーマルから戦闘モードに!
なんだか見た目も強そうだよ。
でもその格好、打撃というより……。
「どうしたの、パティちゃん?」
「月歌は、打撃よりも……」
「打撃よりも?」
「組技の方が強そう……」
それも格闘技ではあるけれど、まあ、それはまた今度。
今日は打撃の日だからね!

「さて! レンの調子はどうかな?」
「……………………」
レンは両手を前に構えて、ガードするような構えを取っていた。
うん、構えはしっかりしてるかな。
「よーし、じゃ、私の手のひらに向かっておもいっきりジャブを出してみようか。当てていいからね!」
「……………………」
「はい! わんつー、ジャブ!」

ぴこ

そんな音が聞こえたような気がした。
打撃的にはものたりないけど。
でも、このちっちゃな動作、かなりかわいい!
ため息が出ちゃうなあ。
「……………………」
パンチはどう? というようにレンが私を見る。
「え、えーとね……」
パワー不足は、まあしかたない。レンは体小さいし、ウェイトもないしね。
フォームは、私のお手本通り。飲み込みが早いよ。
でも……。
「……それでいっぱいなのかな?」
「……………………」
レンがこくこくと頷いてみせる。
私の手のひらに向かってまっすぐ伸びた腕は、かなり手前で止まってた。
「リーチが全然ないね……」
レンはレンなりにいっぱい腕を伸ばしてた。
そのせいで手袋と袖の隙間から、細い手首と日焼けしてない肌が見えたりして。
「うわー、レンの肌、真っ白ー」
「本当に、うさぎさんみたいですわ」
「……………………」
月歌も興味津々といった感じでこっちに寄ってくる。
「腕も柔らかいよ! ぷにぷにしてる! おもちみたい」
「私も触っていいですか? ほそ〜い! うらやましい……」
「……………………」
「……二人とも、レンが困っているようなのだが」
オニキスの咳払いで我に返る。
いけないいけない、つい夢中になっちゃった。
レンも顔を赤くしていたりして。
ごめーん、でもかわいいー。
「あー……リーチがないなら、今度はキックにしようか? キックならもう少しリーチが長くなるしね!」
今日は打撃の日! キックも打撃だから!
「左足を軸にしてステップイン! 体を回転させて右足を相手ボディに!」

ボッ!

「これがミドルキック。足は手に比べて筋肉がついてるから、パンチよりずっとパワーがでるんだ!」
私はパンチも好きだけど、キックの豪快さも大好き。
威力抜群だし、スカッとする度合いが全然違う。
うまくなるにはそれなりに練習しなきゃいけないけど……。
これで打撃力倍増だね!
「あの、パティちゃん?」
「なに? いまのお手本じゃわからなかった? じゃ、もう一回……」
「いやそうじゃなくて……」
そう言って、月歌はもじもじする。
「その……足って、そんなに高く上げないといけませんか?」
「え? ミドルキックだから、そんなに高くないと思うけど……」
ミドルキックは、相手の腰より少し上くらいに当たるキック。
だから、よっぽど体が硬いんじゃなければ、無理なく届く高さだと思うけど?
「あの、できないわけじゃなくて……」
「……?」
「……私、袴だから」
「……………………」
「レンもスカートだから、このままでは少しきわどいかもしれないな」
……しまったあ! そこまで考えてなかった。
ここでまともなキックできるのって、ホットパンツの私だけ?
「パティ、これでいいみゃあか!」

しぴっ!

ねこめがなかなかいい音をさせながら、くるくると空中で回転している。
でも、ねこめ、ミニスカートだしー! パンツ丸見えだよっ!!
「ね……ねこめ。女の子同士でも……それはね?……女の子なんだしね?」
「キック、楽しいみゃあ!」
……月歌が真っ赤になってアワアワしてる。
ああ、かわいい。かわいいのだけど。
ごめーん。

うう〜ん、全体的にパワー不足、ということなのかな?
パンチが弱くて、キックが苦手なわけだから。
なにか手っ取り早くパワーアップするには……。
「魔法の防具の出番かな?」
……………………大丈夫かな?
大丈夫だよね。なにかひっかかる気もするけど。
格闘技教室とはちょっと違ってきちゃうけど、これも私のスペシャリティ。
「パティちゃん? 魔法の防具というと……」
「うん、私がつけてるこれのことだよ!」
肘と膝のプロテクター、それからグローブとブーツでワンセットなんだ。
私が防具の力を発動させるキーコードを唱えると、それぞれがほんのりと光りを帯び始める。
これこれ、力がぱぁと沸いてくる感じ。これがまた気持ちいいんだよね。
魔法の防具の私にくれる力は大きく分けて二つ。
目に見えないフィールドを張って、私の体を守ってくれるのと、もう一つは力を何倍にもしてくれるというもの。だから……。
「えい!」
私が地面を軽く蹴っただけで、みんなの頭の高さまでジャンプできちゃう。
オーバーヘッドキックだって、楽勝!
私はそのまま空中で二回転ほどして着地した。
「じゃん♪ とまあ、ざっとこんなものよ!」
「すばらしい身のこなしですわ」
「……………………!」
「じゃ、さっそくつけてみて!」
「ええ、喜んで♪」
ブーツも渡すので、その間私は月歌の草履を。
かわいいけど、これだけ履くとヘンだ。

魔法の防具をつけた月歌が、軽くパンチを出してみる。
「あんまり変わった気はしませんね……」
「なにか力を試すものがあればね。すぐわかると思うけど」
まわりを見回すとちょうど良い具合に、枯れて倒れた木があった。
「あれなんか、いいんじゃない?」
あれぐらいの太さなら、手刀でまっぷたつかな。
どかんと盛大な打撃音が聞こえてくるかなって、思っていたのだけど……。
「よいしょ」
月歌は倒木をひょいと持ち上げた。
「軽いですわ! まるで小枝みたい」
ま、そういう試し方もあるよね。
「片手でもほらほら、私力持ちです!」
「すごいみゃ、ねこめもつけてみたいみゃ!」
ねこめにはちょっとぶかぶかかな。残念!
「これだけ力持ちになればきっと……」
「きっと?」
「大掃除とかお引っ越しの時、役に立つでしょうね」
ははっ、なんだかその感想、すごく月歌らしいなあ。

今度は月歌にかわってレンが防具をつける。
レンの靴はさすがに私には履けないから、今度は裸足。
「……………………」
「サイズは、少し大きめのようだな」
肘当てとかもちょっとずり落ち気味。
でもレンは大丈夫というように頷いてみせる。
さーて、どんなふうに防具の力を試すんだろ?
レンはゆっくりと膝を曲げた後、ぽんと地面を蹴った。
「……………………!」
バビュンという音ともに、空へと飛び上がるレン。
「レンちゃんが……、すごい大ジャンプです!」
「へへー、これが魔法のブーツのパワーだよ!」
「…………! …………!」
普通に歩いているつもりでも、体はポンポン跳ねちゃう。
それぐらいのパワーがある。
「肩で風を切ってする特大のスキップとか、気持ちいいんだよ!」
でも、レンのそれはなんだか危なっかしい。
スカートがめくれそうになって、一生懸命押さえたりしてるし。
勢いがつきすぎてるのかな?
「……レンちゃん、ちょっと飛びすぎじゃないですか?」
「……ジャンプが木のてっぺんまで届きそうだもんね。レンの体重が軽いせいかな……」
しかも、レンはどんどん広場から離れていってしまう。
「ねえ、レン! どこいくの?」
大声で呼びかける私に、レンはすごく困った表情を浮かべながら一言。
「……制御不能」

「大ジャンプが止まらない?」
レンはこくこくと頷く。
まさか、魔法のブーツが暴走? 力の制御、できなくなっちゃってる!?
「パティちゃん! 確かこのまままっすぐ進むと」
「え? なにかあったっけ?」
「……滝があったと思うのだけど」
「だ……大ピンチ」
このまんまじゃ、レンが滝つぼに! 最悪!!
レンって泳げたっけ? いや、そんなこと気にしてる場合じゃなくて……。
「どうにかしてレンを止めないと!!」
「でも、どうやって?」
「私が……なんとかする!!」
せめて方向さえ変えなきゃ、滝つぼコースはぜったい阻止しなきゃ!

そうしている間にも、レンはどんどん滝に向かって進んでいっちゃう。
いますぐにでも進路を変えないとレンが危ない!
私はもう裸足で全力疾走! 地面が柔らかいところで良かったよ……。
レンは派手に跳ねているけど、追いつけないほどのスピードじゃない。
走るのも私の得意だしね!
「レン! ストップストップ! この先、滝だよ!」
「……………………」
横に並んで危険を知らせても、レンは相変わらず跳ねながらフルフルと首を横に振る。
やっぱりまだ制御不能? サイズが合わなかったのがまずかったのかなあ。
レンはどんどん進み続けて、もう水がザアザア落ちる滝の音まで聞こえてくる。
……ここは相当思い切ったことをやらなきゃダメかも。
「ちょっと荒っぽいけど……」
レンに魔法のブーツを履かせた責任もあるし、私がなんとかしないと!
絶対守ってあげるからね、レン!
私は息を整えて、跳ねるレンに狙いをすます。
一度のチャンスにすべてをかけて……!

「たっくる!!」

着地した瞬間、私はレンの頭をつつむように真横から飛びついた。

……あえて転ぶぐらい思い切ったことをすれば、どうにか止まれるはず!
これだけ上下の動きが激しいと、転べって言ってもレンには無理だよね。
だから私が体をはって!
「つっかまえた!!」
私は腕の中にレンをギュッと抱きしめる。
計算通り!
これでレンがバランスを崩して転んでも、私が守れる。
あとはこのままゆっくりと地面に……。

その時、グンッと強い力が私を下から突き上げる。
「え、なんでぇ!?」
「……………………!!」
「わぁあああ!!!!」
「レンちゃん! パティちゃ〜ん!!」
そうだった。魔法の防具で腕力も脚力も倍増だから。
「勢いが止まらない〜!!」
「……………………」
レンを止めるどころか、私ごと飛ばされちゃう。
全然力が足りない……!

滝つぼ突入阻止失敗!?

レンは私の腕の中にいるけど、私たちは空中に高々と浮かび上がっていた。
滝の音がどんどん近づいてくる……。
どこに? どこらへんに!?
落ちる場所だけでも確認しないと!
私は頭を振って落ちてゆく背中に目を向ける。
でも、目の前に迫った来たのは……。
滝じゃなくて……、木の枝!?

ばさっ! ばささ!!

「い……イタタタタ!」
団子になった私たちは、その枝の中にポンと飛び込んでしまう。
レンをかばう私の背中と肩にびしびし衝撃が!
「痛っ!!」
跳ねた枝が、ほっぺたをひっかいた。
でもいまはまだ気にしてなんかいられない!
お願い、止まって!!

ががっ! ざざぁっ!!

細かい枝が、背中の方で折れ砕けていく。
私たちは木の中へと、どんどん落ちていった。
何に何回ぶつかったかなんて、全然覚えていられない。
でも気がつくと、まわりはすっかり静かになっていて、私とレンは、木の中程に引っかかって止まっていた。
なんだか信じられない感じで、私の頭の中に最初に浮かんだ言葉は。

「止まった……」

本当にそれだけだったんだ……。

「レン、大丈夫?」
「……………………」
レンはこくこくと頷く。
防具の力がちゃんと働いていたみたいで、どこにもケガをしてないみたい。
レンはハンカチを取り出して、そっと私の頬に当ててくれていた。
少し血がにじんでいて、そのせいかレンの顔も少し青白い。
「……………………」
「大丈夫だって、これぐらいならすぐ琥珀が治してくれるから」
こんなのケガに入らない、いつものことだよ?
すまなそうに目を伏せるレンに、なんでもないと私は手をふった。
それよりも問題は……。
「……どうやって降りようか」
「……………………」
私とレンが滝に突っ込む代わりに、少し進路が外れて、滝のまわりに生い茂っていた木に突っ込んでしまっていた。
まあ、どっちがましだったのか、いまとなってはわからないけど。
ひっかかっている木から見下ろしてみると、まだ結構な高さがある。
動くと枝が折れそうで、もう二人でじっとしてるしかない。
「二人とも〜、いまハシゴを借りてきますわ〜。もう少しの辛抱ですからね〜」
月歌がはらはらした様子でこっちを見上げてる。
今日はもう本当にとんだ格闘技教室になっちゃったよ!
せっかくかっこいいところが見せられると思ったのにな。
魔法の防具も、慣れてないと意外と危ないかも。
さすがの私も、ミス連発で落ち込んじゃうかな……。
私は格闘技を始めた小さい頃、思い通りに体を動かせなかった頃を、ちょっと思い出していた。
「……慢心しちゃいけないね」
「……………………」
いま良いことを言った、というようにレンが頷く。
「……頂門一針」
「ちょうもんいっしん?」
「つまり頂門一針とは、痛烈な戒めのことを言う」
と、私たちの様子を見に上がってきたオニキスが言った。
「今回は痛い思いもしたわけだし、良い教訓になっただろう?」
「顔にケガまでして、よくないですわ。痕が残ったら困ります」
一緒に私たちのところまできた琥珀がプリプリしながらオーブで私の手当をしてくれる。
おてんばでごめんね琥珀、でもやっぱりこれが私だから。
限界いっぱいギリギリまで、体を思い通りに動かす。これが気持ちいいんだ!
みんなにも同じ風にって思ったけど、いきなりは無茶だったね。はんせい〜。

よーし。
「第二回パティの格闘技教室は、跳んだり跳ねたりのない組み手に決定! 基礎からみっちりやろうね!」
「まったく懲りない子ですわ……」


     ★おしまい★


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©BROCCOLI Illust/桜沢いづみ