おまけ

民俗に残る『でじこミ2』


『でじこミ2』の開発という大事業を成し遂げた、有限会社M2の代表取締役タムチャイ氏は、領民を労うため、利根川のほとりで大酒宴を催した。

酒宴の参加者は千葉県だけでなく、近隣の茨城県や埼玉県や東京都、さらにはインドネシアやビルマといった遠方の国の者が含まれており、領民はタムチャイ氏の徳の高さをほめたたえた。

と、そのときであった。ひとりの使者が、タムチャイ氏の前に走り出て叫んだ。

「大変です! 川上で起こった豪雨により、まもなく利根川は氾濫します!」

領民たちのほろ良い気分はこれで一気に醒めてしまった。

「たいへんだぁ、早く避難しないと、流されてしまうぞぉ!」
「やべっ! コンロにヤカン掛けっぱなし!」
「録画の予約がぁ!」

しかし、そこでタムチャイ氏、少しも慌てず、

「あいや、待たれぃ! 幸い、洪水の到来までには少し時間がある。それまでに、何か策を考えるのだ!」

と冷静を呼びかけた。

ざわざわ……。

とはいえ、いったいどうすればよいのか……。

酒宴の途中であった領民に、それを期待するのは少々無茶であった。

しかし、そこで一人の救世主が現れた。

それは『でじこミ2』のプログラマーのA氏であった。

彼はこぶしでテーブルを叩きながら言った。

「ぶるわわぁぁぁぁ、酒もうないの? ないの? 追加注文したいんだけど、仲居さん呼んで!」

この言葉を聞いたタムチャイ氏の頭に、何か閃くものがあった。

「そうだ、追加注文だ!」

タムチャイ氏は携帯を取り上げ、工場へ連絡した。

すると、3分もしないうちに輸送ヘリが利根川上空に飛来した。

ヘリは、製造したばかりの『でじこミ2』を満載したコンテナを、河川敷に次々と投下した。

「タムチャイ氏は、あんなに『でじこミ2』を追加注文してどうするつもりなんだ!」

「わからぬ! しかし、タムチャイ氏のことだから、何か深い考えがあるに違いない!」

領民たちは口々に言った。

「これ、酒じゃないじゃない! もっと強いやつないの、強いやつは!」

一人出来上がっているA氏はさておき、タムチャイ氏はコンテナの中から、出来たてのまっさらな『でじこミ2』をいくつかつかみあげ、それを天にかざした。

「この『でじこミ2』を土手に積み上げ、堤防を作るのだ! さながら、『でじこミ2』において、グッズを購入してお店をパワーアップするかのように!』

領民たちはこの言葉を聞いて、即座に各々がなすべきことを理解した。

あっという間に、『でじこミ2』の堤防は完成した。

洪水が怒涛のように押し寄せ、堤防はぐらぐらと揺れた。

「ウワー、もうダメだー!」

さしもの『でじこミ2』も、利根川が相手では分が悪いのか。

領民たちの間から、あきらめの声が漏れ始める。

「くじけてはならぬ! 我々が『でじこミ2』を支えなくて、誰が『でじこミ2』を支えるというのか!」

そう叫ぶと、なんとタムチャイ氏は自らの手で『でじこミ2』の堤防を支え始めたのであった。

「そうだ、そうだ! 『でじこミ2』には俺たちの命がかかっているんだぁ!」

「俺たちが、俺たちの手で『でじこミ2』を支えるんだぁ!」

またひとり、またひとりと『でじこミ2』を支えるにんげんが増えてゆく。

『でじこミ2』を支えるのは、にんげんの手でもなければ、使命感でもなかった。

それは『でじこミ2』を愛する、ひとりひとりの人間の心なのであった。


こうして、ひとびとは、利根川の氾濫に打ち勝ったのだ。以来、村人たちはこの出来事を忘れぬよう、毎年7月になると、新しい『でじこミ2』を買って、神社に奉納するようになったとさ。