おまけ

“でじ”タルなコミュニケイション
DiGi-tal Communications

取材・文 ケニチロ・キクチ
2004年7月25日 A市にて


あの『でじこミ2』が発売されて10日余りが過ぎようとしている。この夏は記録的な猛暑ということもあり、『でじこミ2』の人気は高まるばかり。あまりの人気に「『でじこミ2』のルーレットは、大事な局面になると決まって暴発するようにプログラムされている」と業界の一部では囁かれている。そこで我々取材班はこのウワサの真偽を確かめるべく、『でじこミ2』を開発した有限会社M2への取材を敢行した。

有限会社M2は北関東の利根川沿いにある、小さなソフトハウスである。その正確な場所は、先方の希望によりお伝えすることができない。その点はご理解をいただきたい。

待ち合わせの喫茶店で我々を迎えてくれたのは、有限会社M2の代表取締役タムチャイ氏(仮名)であった。タムチャイ氏はタイ出身。がっちりした体つきの中年紳士である。氏は少々なまりのある日本語で、我々の質問に答えてくれた。


――本日は我々のインタビューに応じていただき、まことにありがとうございます。

タムチャイ社長(以下、タ):どういたしまして。それに、これは宣伝にもなります。だから問題ありません。

――さっそく、本題に入らせていただきます。『でじこミ2』のルーレットは公正でない、という意見が数多く寄せられています。事実なんでしょうか?

タ:暑さのせいで気が短くなっているのではないか。タイ人に比べると、日本人は暑さに対して脆弱だ。

――これまでにない意見です。具体的な対策としては何があるだろうか?

タ:日本にはこういうことわざがあると聞く。「熱さも寒さも彼岸に至るまで」。精神修養を積んで解脱すれば気候など関係なくなるということだろう。

――フェンスイ(風水)は効果があると思うか?

タ:あれは迷信だ。連中は、PCケースを黄色に塗ったり、モニターをぴったり西の方に向けたりするくらいで、ウインドウズの動作が安定すると本気で考えているのだろうか。試してみたが全く効果がなかった。憤りを感じる。

――お試し版の終わりのところで金色の大仏が登場しますが、あれにはどういった意味があるんですか。やはり、タムチャイさんの出身であるタイと関係があるんでしょうか?

タ:それは考えたことがなかった。あれはシナリオを書いた男が強く主張して実現したアイディアだった。別に、ふつうのことだと思うが。

――いや、かなり個性的なアイディアだと思いました。非常に東洋的です。

タ:もちろん、タイの仏像とは形が異なっているから、そういう意味では少し変だと感じた。しかし、日本の仏像はあのような形なのだろうと私は考えた。お試し版だけで判断するのは危険だと思う。ちゃんと製品版を購入してから判断して欲しい。

――タムチャイさんは、デ・ジ・キャラットの登場キャラの中で、誰が一番好きですか?

タ:D・U・Pの解散宣言にはひどいショックを受けた。まだ信じられない。開発スタッフの中には、心を病んでひきこもりになってしまった者もいる。心の傷は容易に癒えるものではない。12月にあるというラストコンサートには、ぜひ彼と出席したいと願っているのだが。

――それはお気の毒に。

タ:彼にはケアが必要だ。

――重ねて問いますが、タムチャイさんが最もお好きなキャラクターは?

タ:ゲーム開発中に起こった、興味深い出来事についてお話ししましょう。

――あのう……。

タ:あまり内幕を明かしてはいけないとは思うのだが、これは誰かが語り継がねばならない重要なことだと思ったから、話す。当初、このゲームは3ヶ月で作る予定だった。

――3ヶ月ですか。それは、かなりのハードハークが必要とされますね。

タ:諸事情によってそれは果たせなかった。私の力不足もあるだろう。しかし、世界には、個人の力ではどうしようもない、大きな法則がある。理解できるか?

――ええ、まぁ……。

タ:D・U・Pの解散宣言もそのひとつだろう、と私は理解している。

――それは知らなかった。

タ:『でじこミ2』のストーリーは、実は仏教の教えが元になっている。このゲームをくり返し遊ぶ者は、たとえば、六道輪廻などを知らずのうちに体験することになるのだ。その他、解脱のためには、友や肉親の愛でさえ障害となるのだということも理解するでしょう。世は幻なのです。

――なるほど。実をいうと、私は『でじこミ2』のストーリー展開には理解しがたいものを感じていた。その理由がやっと理解できた。

タ:シャカムニは王族だったが、その身分を捨てた。厳しい修行を体験して仏陀になった。当時、仏陀の教えを広く受け入れたのは貴族や商人のクラスだった。蓄財するなと。お布施をせよと。そういう主張があった。強くある。でじこも、異星のですが、王族です。そこには通じるものがある。

――なんとか理解できます。

タ:お経を読むことは尊いことです。しかし、お経が他の人が読めるように行動することはもっと大きな功徳があります。同じことで、『でじこミ2』を買うと功徳があります。しかし、もっと功徳があるのは『でじこミ2』が他の人が買うようしむけることです。

――ああ。オフセ(お布施)ですね?

タ:日本は、世界の先進国の中では唯一の仏教国です。ですから、この考えは人々には理解されます。

――とても、ありがたい話でした。

タ:もっと多くの人が、『でじこミ2』を通じてブッディズムに触れて欲しい。そして、他の人にも伝えて欲しい。別れるとき、タムチャイ社長は両手を胸の前で合わせ、頭を下げた。私の記憶が間違いでなければ、タムチャイ社長の口元には笑いが浮かんでいた。あの東洋的なスマイルは、はたして私に何を告げようというのだろうか。そのとき、私の耳には、『でじこミ2』のメイン人物であるデ・ジ・キャラットの、「にょ(如)」という謎めいた感嘆詞(?)が聞こえたような気がした。


*この記事はフィクションです。ここに登場する人物、団体は架空のものであり、実在する人物、団体とは一切関係ありません。