モンコレ・クロニクル〜伏龍殿の覇者発売直前編〜第8回

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皆さん! こちらのブログでは初めまして!
グループSNEの加藤ですー!
モンコレではゲームデザインとかさせていただいています。
以後、お見知りおきを。

さて、「おお、クロニクル! 楽しそうだ、書きますよー!」と気軽に引き受けたものの、なにを書けばいいものやら、頭悩まし中。
カード紹介のほうは、ブロッコリーさんや富士見書房さんががんばってくださっているし、同じことやっても、カードがかぶっちゃう可能性大。かといって、違うカードの紹介ばっかりしちゃったら、いざブースターの袋を破るときのわくわくがなくなっちゃうかもしれない。

そこで考えました。加藤だからこそやれること。
開発の経過や裏話とかどうだろう?
あんなこととか、こんなこととか、お酒なしでは語れないようなこと、詰め合わせ!
おし、それしかないような気がしてきたぞ!
というわけで、今回のクロニクルは——

『伏龍殿の覇者』の開発秘話ー!(旧ドラ○もん、秘密道具風)

——でいきたいと思います。
ただ、あんまり前のめりで書いちゃうと、シャレにならない可能性もでてくるので(笑)、箇条書き、便所の落書き風味でお送りします。
それでは皆様。短い時間ですが、おつきあいのほう、よろしくお願いしますぜー!

ぶー(幕の開く音)

◆ステージ2のテーマ「儀式」について

▽開発当初、テーマを「儀式」にするか悩んだ
・儀式が復活すると「待っていました!」という声よりも、「ええー、しんどいなぁ」という声のほうが大きいんじゃないかという危惧。
・でも旧作を考えると——儀式までそろってモンコレではないか?
・ダメというのはいつでもできる。まずは色んなパターンをテストして、慎重に進めてみよう。
・でも6月にスタートアップデックが発売される。そこまでに儀式を作らなければならない。
・あれ? テスト期間すくなくね?(苦笑)

▽儀式はいくつものパターンをテスト
・旧作のような「地形依存型」。いわゆる《ストーン・サークル》系地形+儀式スペルのヤツ。
・地形には依存しない「戦略カード型」。《ストーン・サークル》系地形は必要なく、手札や山札を破棄するコストで使用できるタイプ。
・そして儀式そのものが地形の「儀式型」。現状の儀式地形に近いタイプ。
・ほか、ユニット依存なんかもあったような気がする。
・一通り遊んでみてわかったこと。ペナルティや使いにくさを課したからといって、強くするというバランスは、対抗ができない儀式ではよくない。結局、使われたときの不快感には違いがないから。

▽不快に繋がる要素の研究
・焼き儀式の存在。
→ユニットを展開する気がなくなる。
・手札からいきなり使われるという不意打ち要素。
→全部の儀式を覚えて、あらゆる対応をしながらプレイするのは難易度が高い。
・儀式対策のために圧迫される構築環境。
→儀式という存在が導入されると、その対策のためにデック構築の数枚が決まってしまう。

▽不快要素をつぶし——儀式地形に決定
・組み込んだ儀式が相手とかみ合っていなくても、地形として配置できるので、無駄が少ない。
・対策は《吹き抜ける風》系で対応できるので一石二鳥(デック圧迫が少ない)。
・「発動条件:1ターン経過」の導入。配置して1ターン経過すれば、不意打ちにならない。使い手にしても手札に持っておかなくてもよいのは、ある意味で利点。
・「▽(反転型)特殊能力」の導入。1枚につき1回限りの条件のために。裏返して代理地形に変更することは、儀式使ってる感じがする。

▽実は最初、「属性」があった
・どんなデックにも入る万能儀式は環境を変えすぎる可能性があり、第2の《妖精の輪》になりかねないのを緩和するため。
・それぞれの属性の特権儀式を作れば、「あいつはこの属性だから、あの儀式を警戒すればいいんだな」ということになって、面白くなるんじゃないだろうか。
・火の特権=再進軍儀式と焼き儀式、水の特権=超展開儀式と召喚儀式、土の特権=代理地形化儀式と限定焼き儀式、風の特権=地形交換儀式と戦闘で先攻をとる儀式、聖の特権=手札補充儀式、魔の特権=手札破棄儀式 ……などなど、たくさんテスト。
・ただしこれだと「種族効果」など、旧作の儀式スペルのにたくさんあった効果が作りにくい。
・属性統一は一つの構築バリエーションとしていいかもしれないけど、そればっかりになるのもなぁ。
・また、属性統一が基本になると、儀式1枚の強さによって属性の順列が今以上にできてしまう。最初はいいけど、カードが増えていくととてもじゃないが把握しきれそうにない。
・そろそろスタートアップデックの締め切りだよ? どうするの?

▽第2の《妖精の輪》論について、もう一度考えてみる
・必ずデックに入るカードは、TCGとしてはあまり好ましくない。
・でもそのレベルのカードが複数に増えたら、(地形である限り)逆に選択肢にならないか?
・強いからと言って、地形を10枚近くいれることになれば、それはもう地形デック(=デックの個性)になる。
・逆転発想を突き詰めて——第2、第3の《妖精の輪》として考えてみよう。ユニットを焼く《魔神掌》、カードを回収する《朧月夜》や《宝物庫》であれば、良いのかもしれない。
・属性はとりやめることに。属性推奨儀式であれば、効果として作れるしね。
・ロケテストもやってもらえるし、そこでの意見も見てみよう。

→完成!

◆がんばれ! 無印ユニット!

▽あるとき、テスト中にふと思った
・儀式成分が足りないんじゃないのか?
・前ステージの「英雄」に対して、どうしても「儀式」地形は地味。
・さらに儀式をマイルドにして、組み込みやすくした結果——ちょっと変わった地形の一種にとどまっていないか?
・このままでは薄い! 儀式っぽいデックを組めるようにしよう!

▽儀式っぽいデックってなんぞや?
・戦闘で強いデックは、戦闘スペルがわんさか入っているので、あんまり儀式を組み込む余裕はない。
・じゃあ、それらが入っていないデックであれば!
・アイテムもスペルも持っていないユニット(無印ユニット)を支援しよう! あいつらでかいの多いし、バカだから戦略単位(メインフェイズ)で派手に暴れ回っても、戦術単位(戦闘)で勝ちにくい。それを拡大支援してみよう!

▽なにをすれば楽しくなるか
・でっかい無印8レベルとか即時召喚できたら、びびるよね!
《裏魔法陣「海」》変更再録!
・それにはリミット足りないよね!
《驚天動地》変更再録!(実は最初、リミット+8だった)
・儀式だけでは追いつかない! 地形も必要だ!
《原始のヘソ》変更再録!
・ダメだー、どこまでいっても大型ユニットは本陣うまっちゃうので展開が……
《ライノタスク》変更再録! などなど。

▽結果、こんな感じになった!
・同時が超うれしい! 数字の暴力を味わえること請け合い!
・ほかのTCGでは考えられない。大型ユニットのほうが展開が早いという環境!
・戦闘は答えあわせ程度! 戦略で今までとは別のモンコレ脳を使う!
・「《驚天動地》発動! 本陣をリミット+5します! さらに《裏魔法陣「海」》を発動! 無印ユニット即時召喚可能です! そして《トルネード・ホーク》を長距離飛行で本陣に進軍! 《ヨルムンガルド》を即時召喚します!」とかできるぜ!

→完成!

◆4レベル強化月間!

▽不遇な4レベルをなんとかしよう!
・アニバーサリーで変化した環境「3レベル即時召喚」。最初はそうでもなかったけれど、カードセットが増えるに連れて、4レベルとの溝が開いていった。
・かといって、ユニットは「数字をいじくらない」という信念のもとに再録してきたので、特殊能力でカバーするしかない。
・トロールやスノーマンは、苦戦しつつも割といい感じに収まった。今までの4レベルにくらべても、0.5〜1ポイントくらい強い感じに。
・そして、あるとき。伏龍殿の打ち合わせ時に誰かが言った。
・新規ユニットの4レベルが足りていない気がします。
・入稿一週間前の出来事である。でもまだ一週間あるなら、やれるか。

▽どう強化する?
・4レベルは半分くらい即時召喚可能にしてみてはどうか?
・それだと、今までの4レベルがかわいそうすぎるし、インフレが激しすぎる。
・じゃあ「限定環境下で強くなる(どんなデックに入っても活躍するわけじゃないが、テーマのあるデックを構築したときに強めになる)」のがいいんではないだろうか。
・幸い、《ブレイズ・ボアー》や《黒曜蟹のグラップラー》のように、各属性にテキストの白い4レベルユニットを伏龍殿には用意していた。
・こいつらだけでも、限定環境下即時召喚可能にしてみるのがいいんじゃない?
・それで様子見てみようか。時間が時間だし。
・テストして意外とハマった!

▽精霊王もどき
・また、各種精霊王の分身のような4レベルを用意していた。
・これも即時召喚可能にする? いや、こっちは精霊王の分身でもあるんだし、属性支援が基本。
・じゃあ、ちょっと強めに「属性統一を推奨」するようなカードにしてみよう。
・属性が統一されていれば攻撃力+1効果、防御力+1効果。
・テストしていい感じ。ただし、一部を除けば。
・先手をとれない火があまり嬉しくない。
・メディアその他がいる、バランス水が防御力+1は相当ウザイ上に、墜ちない。あとワニがやばい。
・じゃあ、偶数レベルも問うことにしよう。
・それに、属性によって違いを少しだそう。火と水は「イニシアチブ」と「攻撃力」支援に。土と風は「攻撃力」と「防御力」支援に。
・さらにテスト。これなら(限定下であれば)今までの4レベルより間違いなく強い!

→完成!

◆新たなスペルの組み合わせ推奨ユニット! 〜その1「土聖」


▽土聖の組み合わせを作ろう
・土聖といえば、「なかなか死ななさそうな、うっとおしい組み合わせ」。
・なので後攻推奨にしてみよう! 組みあわせ的に生き残れるだろうし。
・土聖が似合いそうな生物とかあるかなー。水魔は「カニ」だったし……なんかないかな(某SNE産TCGのリストを見直してみる)。
・「土蜘蛛」っていいんじゃね? 名前的にも「土蜘蛛のなんちゃら」なら、字面もよさそう。
・毛むくじゃらの土蜘蛛たちが「土聖」スペルをもつ偶数ユニットとして参戦!

▽後攻推奨と一言に言っても
・後攻になったら強いカード。《フレアー》とかあった。でもあんまり使われてないなぁ。
・じゃあ、後攻で使ったら「対抗不可」とかどうだろう。一見、矛盾しているこの組み合わせなら面白いかもしれない。
・《土蜘蛛マグダラ》完成!

▽富士見さんとのイラスト打ち合わせ
・コミカル路線ですかね?(稲垣さん)
・いえ、リアル路線で!(加藤)
・イラストレイターさんから「蜘蛛原型に近い今のラフ」と「より擬人化の進んだ女の子風ラフ」が届く。
・女の子風も捨てがたいけどなぁ。でもアラクネいるし、ここはもちろん、キモいほうで!

→完成!

◆新たなスペルの組み合わせ推奨ユニット! 〜その2「風魔」

▽狐成分が必要だ!
・平成たぬき合戦ぽんぽこを観て——お、キツネ人間とかいいね!
・キツネ → お稲荷さん → なんかエロい → 男のキツネは見たくない → くのいち → これだ!
・じゃあこれからの色気担当として、種族化するか。フォクシア誕生!
・キツネといえば《ナインテイル》ってのが昔いたなぁ。どれどれ……うわー、このままだとめんどくさいなぁ。じゃあ女の子がバケてる絵にして……花魁とかいいねえ →ヴァッセル誕生!
・ほかは、そうだな……風魔ということは忍者だね!

▽風魔の特徴はどんなのにする?
・九尾の狐といえば、色んな伝承がある。でもだいたいは「女王や后に化けて、国をめちゃくちゃ」にする悪女。
・旧作の《ナインテイル》はでかくて使いにくいネタ系9レベル。今回のは、バケることにしよう。
・バケる=9レベルになる。やはり《ナインテイル》というからには、9レベルにならなくちゃ。
・決定、テーマは「でかくなる!」ことで。

▽発売間近、ブロッコリーさんとの打ち合わせ
・メインイラストで行きたいので、もうちょっと使いやすく(ブロッコリーさん)
・ちょっ……おま……ナインテイルといえばネタ系やん? でもまあ、すでにヴァッセルのイラストは超素敵で出回っているし……OK、調整しましょう!(SNE)
・フォーステイルにイニシアチブ+2! ほかネタ系からやや方向転換強化。

→完成!

◆複合スペルしか使いませんわよ! ミネルヴァ誕生!

▽開発当初、アイテム&儀式担当だった!
・ミネルヴァという種族は、上記担当であった!
・調整を重ねるにつれて、つまらない優等生ユニットになってゆく。
・じゃあ、もうまるっきり変えちまえ。
・複合スペルしか撃てないって面白いよね!
・すでにイラストは発注されている、締め切り半月前の出来事。
・でも地形の力を引き出す=オーロラ(極光)のイメージなんで、なんとかなるはず!
・(ラフを確認して)ふうー、いい汗かいた!

▽「*」枠をいっぱい持たせるのは危険
・いかに複合スペルしか撃てないと言っても、これはやばい。
・じゃあ6色待たせてみるのはどうか。 →やべぇ、デック構築から面白い。

→完成!

ざくーっとですが、テーマをさらっとなぞってみました。
いやー、そんなに昔ってわけじゃないんですが、開発当時の(時間との戦いな)イヤーな感覚が蘇ってきて、ほんのりブルーになりました。ぬう。

ほかにもいっぱい書きたいことがあるんですが、それこそクロニクル全6回ぶんくらいになっちゃいそうなので、このへんで幕とさせていただきます。

ここまでおつきあいくださって、ありがとうございましたー!
また、どこかの大会やイベントでお会いしましょー!

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5つのコメントがあります
  1. クロニクル第8回は製作者秘話

    さすが最終回。
    かなり踏み込んだ内容になっています。
    これは読み込むのが大変そうですが、
    記事の内容を吟味してみたいと思います。

  2. ブレイズ・ボアー

    制作秘話が中心ではありますが、
    カードの新情報に当たるものもしっかり含まれていますね。
    4/4/4火聖スペルで限定即時召喚が可能なユニットです。

  3. フォトン・ウェブ

    土聖の複合スペルもあるんですか。
    え?攻撃力3/防御力3に変更する???

  4. 道民モンコレ徒然日記 on 2010-08-18 at 20:09

    モンコレ・クロニクル〜伏龍殿の覇者発売直前編〜第8回!

    こんばんわ、佐井方です。

    ついにクロニクルも最終回!
    最終回ということで、グループSNEから加藤ヒロノリさんがクロニクル執筆となっております。
    伏龍殿の覇者の制作秘話等…

  5. YAPULのブログ on 2010-08-18 at 22:53

    モンコレ・クロニクル〜伏龍殿の覇者発売直前編〜第8回

    昨日で夏休み終了なYAPULです。本日の最終クロニクルは、加藤ヒロノリさんの開発裏話です。だけど面倒くさがり屋のYAPUL、新規カードのみピックアップ・・・?「ブレイズ・ボアー」「…